楽しむことを大切に、子どもの主体性を育む

 東京都調布市にあるNPO法人にこにこの会さんを訪ねた。放課後等デイサービスのほか、お泊りも可能な短期入所サービスを提供している法人だ。平成30年度の木下財団の助成金でタブレット4台を購入。そのタブレットの利用方法と今後の展望など、お話をうかがってきた。

 NPO法人にこにこの会は平成2年設立。当初は成人を対象にサービスを提供していたが、平成21年から対象を子どもにシフト。その頃は、地域には子どもを対象とした事業所が少なかったそうだ。6~18歳までの知的障がいのお子さんを対象に、放課後に豊かな余暇時間を過ごしてもらえるよう、お出かけしておやつ等のお買い物、公園遊び、工作、クッキングなど、子どもの特性に合わせてさまざまなプログラムを企画している。

 今回、助成金でタブレット4台を購入し、主に中高生がゲームをしたり、音楽を聴いたり、映像を観たりするのに利用してもらっている。なぜタブレットだったのか理由を尋ねたところ、「自閉症の子どもたちは、同じ手帳を持っていても、特性はさまざまです。何をするにも、学校では先生、家庭では家族、施設ではスタッフが子どもたちの行動を見守っているので、ある意味、つねに監視があり、サポートされていると思うのです。ですがタブレットだと、見たい映像や聴きたい音楽、したいゲームを自分で選んで好きにできます。あれをしようと周りから言われたことをするのではなく、主体的に自分のやりたいことに取り組めるので、自主性を育むのに有効だと思っています」とスタッフの西村さん。ゲーム等に没頭してしまわないかとの懸念をうかがったところ、「声をかければ子どもたちはすぐやめられます。自分の好きなようにできたという満足感もあると思うし、充実した余暇を時間内で過ごせたことが自信へとつながり、生活スタイルの確立へ持っていけると思います。第一に子どもたちには、“楽しむ”ことを大事にしてもらっています。将来的には、タブレットをゲーム等で利用するだけでなく、1日、一週間、一ヶ月と自分たちのスケジュールを可視化して生活リズムを確立するツールとして活用していきたい」。

 同法人は短所入所サービスも行っているので、子どもたちがご家庭を離れてお泊りすることが可能だ。子どもを対象にお泊りサービスを提供している施設は少なく、利用されている保護者からは自身のレスパイトのためにも頼れる存在となっている。お泊りを楽しみにしている子どももいて、親元を離れて自立のための訓練ともなっている。同法人のスタッフはほとんどが有資格者だ。 お話をうかがった西村さんも、小学校教員免許状、特別支援学校教員免許状、児童指導員、社会福祉主事、知的障害者福祉司、身体障害者福祉司、キッズコーチ検定、ジュニアキャンプカウンセラー、行動援護従事者研修修了と多くの資格を持っている児童福祉の専門家だ。 子どもや保護者とのコミュニケーションを大事にしており、双方からの声や要望を検討しフィードバックしたりしてサービスに生かしている。

 地域との関わりでは、年に1回、子どもたちの作品を含めたバザーを開催して地域の人たちとのコミュニケーションにつとめている。 「放課後等デイサービス”ふくふく”設立の平成28年ころは地域の反対もあったようですが、子どもたちを外に出し彼らの活動をみてもらったり会話をしたり、バザーの開催などで触れ合ったりしているうちに、いまでは地域からの理解も得られているように感じます」と西村さん。同法人の魅力は“切れ目のないサービス”とのこと。「18歳を過ぎても延長して施設を利用していただけるので、学校卒業後も引き続き充実した余暇時間を過ごしてもらえます。保護者の方と子どもたちにとって、地域の頼れる存在でありたい」と語ってくれました。